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-Mind Logic Linkage- 学園棋神伝マインドル

「私、自分の意志で世の中を変えてやるっていい気になってた」
「みんな、いなくなっちゃった……」

藤森さんは遠い目をして人込みを見つめる。

「さっきから一人、また一人と、今まで一緒に活動してくれてた人がやってきて……みんな口をそろえて言うの。
"悪いんだけど、しばらく活動を休ませて欲しい" って。
そりゃそうだよね。あんなことがあったんだし。引き止めることなんてできるはずない。
みんな、いなくなっちゃった。
活動のメンバーだけじゃない。兄さんも……」

あの後、元講師氏は "追い詰められた末に自殺した" ということで片付けられてしまった。
自殺にしては刺されたのが背中の方だったり、そもそも凶器の刃物だって見つかってないわけで、 少し調査すれば自殺ではないことぐらいすぐにわかりそうなものだ。
しかしそんな調査さえもしないほど、昨今の警察はやる気がなくなっているということだ。
警察にやる気がないだけでなく、それ表立って批判することもない世相、というものがそれを許している。
おかげでキリエへは何のお咎めもない。近隣の住民である俺のところへ聞き取り調査にも来ない。
"おかげで"、などと言ってしまってはいけないのだろうけれど……。

「私、自分の意志で世の中を変えてやるっていい気になってた」

結局、マインドル関連のテレビ番組は相変わらず続いている。
さすがにあのロケは放送されなかったようだが、その分は適当な穴埋めのコーナーが放送され、番組自体は中止にも何にもなっていない。
あの一件を受けてマインドルやマインドルを取り巻く風潮の悪影響を指摘する声も多少は出たが、世間の風潮がひっくり返るほどではなかった。
むしろ逆だ。あのような騒動にもなりかねないからこそ、マインドルを頑張りましょう、という。
ルールを守って正々堂々と切磋琢磨する心を養いましょう。仮面マインドラーなんかに負けないように普段からマインドルの腕を鍛えよう。
ワイドショーのコメンテーターの言葉や新聞のコラムにそうした言説があふれた。
行き過ぎたマインドルブームを批判する言葉を部分的には述べるのだが、結局はマインドルを奨励する言説で話がまとめられてしまう。
元講師氏へも同情どころか批判的な評価が支配的だ。
負けたからと言って暴れるなど人格が幼稚である証拠……とかなんとかいうわけだ。

「私なんかがいくら声を張り上げたって世の中が変わるはずがなかったんだ。
傲慢だった。調子に乗って、たくさんの人に迷惑をかけてしまった」

元講師氏だけでなく "被害者の会" へも風当たりが強くなってしまった。
あんな団体があるから元講師氏のような危険な人物がのさばるのだ、という理屈だ。
"会" に対して今までは単に冷やかなだけだった世間の目は、今や明確に否定的な視線となっている。
メンバーたちがみんないなくなってしまったというのも無理からぬことだ。一言で言うならば、"世間体が悪い" というやつだ。

「折原くん、あなたにも謝らなきゃね」

一瞬、目を向けられて俺はたじろいだ。
謝らなければならないのは俺の方なのではないだろうか?
しかし何に対して?
すでに取り返しのつかないことが起きてしまったのだ。

「ごめんなさい、調子に乗って、巻き込んで、振り回して……。折原くんにも迷惑かけてしまった」

「いや、俺なんて……1日だけ、ビラ配り手伝っただけだよ」

嘘だ。単にそれだけ、などと。
自分などは大したことをしていないと言うのは謙遜ではない。責任逃れだ。
関わりを持ったことは事実なのだ。この悲劇を回避できたかもしれない場所に俺は少しの間とはいえ確かにいた。
しかし、どうすればよかったのかはわからない。これからどうすればいいのかもわからない。

「じゃあ、さようなら」

力なく頭を下げて、藤森さんは昼時の雑踏の中へと姿を消した。
後には何事もなかったかのような、いつも通りの昼時の光景が残る。
そして、それを見てここに立っているこの俺も、その光景の一部ということなのだろう。




■ 製品情報
タイトル -Mind Logic Linkage- 学園棋神伝マインドル
ジャンル 学園物ノベルゲーム & 対戦型ボードゲーム
制作 サイトA (http://www.site-a.info/)
配布形態 フリーウェア
キャラクター画像 『コミPo!』で作成。『GIMP』でいじりいじり。
年齢制限 0歳以上。胎児の人はごめんなさい!
公開日 あなたがこのゲームの存在を知った日があなたにとっての公開日なんだぜ。
対応OS Windows7で動作を確認しました。
メモリ 4G以上推奨

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