「今度のスマーティングシステムはウェアラブル型になったことで、いちいち自分で操作して問い合わせなくても 自動でその場に合わせた正解を教えてくれるんだぜ！ 便利な世の中になったよな！」

「そりゃ便利に決まってるだろ？
自分でわざわざ操作しなくてもいいんだぜ？ しかもセンサーで周囲の環境を読み取ってくれてるから質問の文章を考えなくてもいい。
しかもウェアラブル型だからずーっとつけっぱなしで24時間常に適切なサジェストを受けられるんだぜ？
ちなみに防水型だから風呂場に持ち込んでもOKだ！」

「何言ってんだ？ いちいち自分で携帯を操作しなきゃならない方がうっとうしいだろ？」

「あっはっは。なるほどねぇ。そんなふうに思ってた時期が俺にもありました」

「そりゃあ、使い始めの頃はそんなこともたまにはあったがな。
つまり俺の場合の使い始めというのは携帯型だった頃なわけだが、自分で期待してたのとは全然違う答えが出てきて面食らうこともあったさ。
だが、だからってシステムの答えに逆らって行動しても、いい結果になったことなんて一度もない。
いつだってシステム通りに行動するのが正解なんだよ。
その場では実感できないこともあるが、後になってみれば必ずわかる。必ずだ。
まわりを見てみろよ、みーんなシステムをつけて歩いてるだろ？
みんなそれぞれに学習してるんだよ。下手に自分の頭で考えるよりもシステムを使った方が早くて確実だってことをな。
たとえば自動車があるのにわざわざ隣町まで自分の足で走っていくか？
健康のためだとか何だとか言ってランニングしてるやつもいるが、そんなのは所詮、個人的な趣味の範囲の話だ。
物事の判断だって同じこと。
こんな便利なものがあって、明らかに自分で考えるよりも確実に正解が出るのに、 わざわざ自分で考えることにこだわるのはお遊びの世界だけだ。
"自分の頭で考えるようにちまちょう" なんてのは小学生向けのお題目さ。
まぁ子供の頃は責任がないからそれでも許されるのかもしれないが、現実の世界は遊びじゃねぇんだ。
下手に自分で考えて間違いを犯したらどうすんだよ？ 自分だけじゃなくて他人にも迷惑がかかる。
みんなちゃーんとわかってんだよ。"自分の頭で考えまちょう" なんてのは子供っぽい考えだってことをな。
とは言うものの、実のところこれはスマーティングシステムが登場する前から同じことだよな？
"自分の頭で考えなさい" なんて言ったって結局は "正解" は決まってて、 間違えれば "考えが足りない" ってことにされて怒られる。おなじみのパターンだろ？
だがスマーティングシステムが登場した今となっては、もうそんな理不尽なことで迷う必要もないってこった。いい世の中になったじゃねぇか」